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episode64 『王と悟り』
第5章 命を賭して episode64 木こりのような見知らぬ男のお陰で命拾いし、ソロは無事、ガンディーノの城下町に到着した。 跳ね橋の手前、20メートルはあろうかという立派な城壁を見上げる。 門の上にはやはり立派な紋章が描かれている。ライオンのようなワシのような生き物だ。 ソ「うわぁー。強い軍事国家かな」 挿絵 by 生成AI 門「聖獣グリフォンに守られしガンディーノへようこそ!」門番は、感嘆するソロを見ながら得意気に挨拶を投げかけた。こんな仰々しい城下町は初めてだな。 ソ「グリフォン?」 門「グリフォンを知らないのか?この聖獣のことだよ。ライオンの体とワシの翼を持つ、天下無敵の生き物だ」 ソ「そんな生き物本当にいるのですか?」 門「だから聖獣だって言ってんだろう? 昔はいたらしい。幻の聖獣さ!そんな神に守られているのだから、ガンディーノは強いのだよ!」 ソ「へぇ・・・」それは大したものだ。 ソ「余所者が入ってもよろしいのでしょうか?」 門「もちろんだ。下手な真似したらすぐに首が飛ぶがな!」 ソロは武器を仕舞って大人しくかしこまり、城門をくぐ


episode63 『王と悟り』
episode63 エドム 神殿の静寂の中、考古学者エドムは語る。 エ「世界のどこか、広大な遺跡の下に、『地獄の帝王』が眠っている、という伝承がある」 ソ「地獄の帝王!魔王のことですか!?」 エ「わからない。伝承というのは曖昧な表現でボカすものが多いからね。 魔王のことに思えるが、そうでないかもしれないよ」 ソ「地獄の帝王・・・」 エ「それに、厳密に言えば『遺跡の下』ではないんだ。『古代の遺物の下』と書かれてある。それは大抵遺跡のことだろうが、遺跡ではない似たようなものかもしれない、と私は慎重に考えている」 ソ「今この下から、魔王がボコッと出てくるかもしれないんですか!?」 エ「その可能性が少しはある」 ソ「・・・!」ソロは恐れから身震いした。 エ「いや、候補の1つだよ。 広大な遺跡、広大な遺物は、世界には他にまだ幾つもあるだろう」 ソ「そうか。候補の1つ。 ここは聖なる集落だったのかなって、僕は想像しちゃうんですが」 エ「そうだな。 でも聖なる土地のすぐ下に悪が眠っている、ということだって無いとは言えない」 ソ「そうか!!」聖地と断言で


episode62 『王と悟り』
episode62 馬車でやってきた他の観光客たちも、同じように終着点のカーテンから赤い神殿を見上げ、言葉を失くしている。 そして数分もすると、皆もと来た場所に引き返していくのだった。 ソ「あれ?ペトラ遺跡ってこれで終わりじゃないですよね?」神殿の右側には道が見えているし、ペトラは広大な遺跡だと聞いたことがある。 馬「えぇ、この先にも集落遺跡がありますよ。とても広いです。 馬車があったほうが良いですよ。20ゴールド(約2,000円)です」 ソ「もういいよ!遺跡を歩き回るために体力を温存したんだから。もう頼まないよ」 ソロは今度こそ馬車を追い返した。 赤い神殿の先へと歩いていく。道が開けると日が射し、また汗ばむほど暑くなる。でもいいのだ。遺跡は汗をかきながら散策するものだ。少々苦しいからこそ楽しい。エアコンの下の遺跡など、遺跡ではないのだ。テレビやVRがどれだけ発達しても、旅人は旅をする。 観光客は途端に居なくなった。そして集落遺跡が開ける。 ソロはまるで、広大な原始的な赤い町の中にたった一人で居る! たった一人で居る! とても奇妙な、贅沢な感覚


えぴそーど14 『魔王が女の子ってマジなの!?(仮) -もの言わぬ革命者-』
えぴそーど14 一行は、城壁門の近くの交通便の良いところに宿をとった。 この街は人やモノでとてもにぎわっているが、そのわりに宿の数が多くはないようだった。よそ者でもわかりやすい中心地に宿をとると、値段がとても高く面食らった・・・ ヒ「あぁあ、ツノうさぎ倒して稼いだお金が、ほとんどパーだ;つД`) せっかく何か防具を買って強くなろうと思ったのに」 カ「どうせこの街で買える防具なんて、アニメのコスプレだけよ」 ヒ「それも悪くはない!( *´艸`)」 カ「あんたホント危なっかしい性格してるわねー(汗)」 ヒ「えぇ?コスプレかわいくない!?」 セ「かわいい♡」 ヒ「ほら幼い子はまだ純真で正直だよ!」 カ「いやぁわかるけどぉ。 そういうのはね、大好きな彼と二人だけのパーティーで着るのよ」 カ「え?なに?? 彼と二人だけのパーティーってなに!?」 カ「もぉぉぉ!私をイジらないでっ!」 順番に風呂に入り、そしてベッドの周りでくつろいでいる。 ヒ「ふんふんふ~ん♪」ヒナタは上機嫌に鼻歌を歌っている。 しかし風呂から上がってきたカンナが顔をしかめた。...


episode60 『王と悟り』
episode60 3日間金策をして、所持金は7,000ゴールドになった。まだ7,000か!と思ったがこの近辺で戦闘を重ねるのはもう飽きてしまったので、先に行くことにする。 南に行く、と言ったら、おかみさんの娘はソロに薄いレモン色のショールをくれた。頭に巻く薄い布だ。暑い地域はまだ続く。せめて日差しを避けるものを頭にかぶったほうがいい、と母娘は言った。なんだか女の子らしい色なのでちょっと恥ずかしいが、まぁいいか。旅の恥はかき捨てだ。 旅行では、グルメも醍醐味の1つである。どうしてもいろんな店に入って色んなものを食べたくなるものだが、同じ店で何度も食べることも悪くはない。すると店主と仲良くなって、何かと情報をくれたりサービスをしてくれたりするものだ。 または逆に、健気に働くその店の店主を応援したりするのも楽しかったりする。ちょっとした知り合いになるのだ。数日で別れ、もう会うこともないのだが、一種の友情なのだ。 ・・・あの母娘は違った! リンガイアを出て歩いていると、後ろから荷馬車の音が聞こえる。それは日常的なことだが、さらに「ソロさーん!」と声がす


episode59 『王と悟り』
episode59 「はぁ」溜め息を付きながら来た道を帰る。 終始不快な思いしかしていないが、しかし決して悪くはない。この独特な雰囲気を持つ市場は、ほっつき歩いているだけでもある意味では面白い。それは旅行風情に溢れている。 市場の出口付近。短剣をたくさん並べる店を通った。エキゾチックな装飾の施されたこの街独特の短剣なのだ。 ソ「いくらですか?」 店「2ゴールドだよ」 ソ「2ゴールド!?」安い!という驚きだ。 短剣はこの街に腐るほどあり、生活品なので安く売っている。さらに余所者のソロにも吹っ掛けなかった、という道理だ。 ソロはその短剣を1つ買った。何かに使えるかもしれないし、使えないとしても土産物として風情がある。2ゴールドならアリだ。 市場は、城壁の一角に接していた。そして近くにも城門がある。 ソロはその城門から外を眺めてみた。 遠く遠くに肌色の山が見える。いいや山じゃない。よく見ると、その丘にはこの街のような肌色の家がびっしりと並んでいる。しかし家は四角形が崩れたものばかりだ。街が古びて廃墟になったのかな、とソロは思った。または戦争を吹っ掛けら


episode58 『王と悟り』
episode58 朝目が覚めると、屋上からは街が一望できた。 薄茶色の家が延々と並んでいる。美しい、とも言えないが美しい。風情がある、と言えばよいのだろうか。それはきっと、住民からすれば殺伐としていて能がない。でも余所者からすれば、風情がある。町並みや景色というのは、面白いものだ。 宿を出ようとすると、「治安が悪いから気を付けて!」と宿主に言われた。 ソ「なんとなくわかっているつもりですが、どう危険なのですかね?」 宿「盗賊ばかりだからね。唾掛けられたり騙されたり、色々あるよ」 ソ「えぇ、覚悟してるつもりですよ」 宿「そういうときさ、冒険者はケンカしちゃうこと多いんだよな」 ソ「あぁ」想像が付くな。 宿「それが危ないんだよ。この国の盗賊は、強い奴も強いからさ!セントベレスって山に行ってきた奴なんかは強いよ。ケンカしたら危ないんだ」 ソ「《毛皮のマント》被ってる人が強いんですかね。ははは」 宿「見た目じゃわからないんだよ。 盗賊ってのはさ、腕っぷしで勝負するんじゃなくて、こざかしい技をいっぱい使うんだ」 ソ「こざかしい技?」...


episode57 『王と悟り』
episode57 娘「もぉ~お母さんまた若い人口説いてんの!」 二十歳かその手前か、年頃の女の子が現れた。カルティエの娘だろう。エプロンを着けながらブツブツ言っている。 カ「いいじゃないか! イイ男ってのは自分からいかないと射止めらんないんだよ!」 娘「いい年して目キラキラさせないでよ」 ソ「旦那さんがいるんですよね?」 カ「まぁね。でもさ、旦那なんて『キープ』にすぎないだろ?」 ソ「キープ?」 カ「そうだよ。みんな孤独になるのが寂しいからとりあえず恋人作んのさ。大好きってわけでもないが不安が埋まるから付き合うんだよ。旦那はあたしの『キープ君』で、あたしは旦那の『キープちゃん』さ。もっとイイ男いたらヨロシクやんのさ」 ソ「ひどいこと言いますね!」悪気もなさそうに。 カ「みんな同んなじだよ。結婚なんて醒めたもんさ。旦那も同んなじだしね」 ソ「まぁそうかもしれないけど・・・」 娘「もう。そういうこと娘の前で言わないでくれる!」 カ「あんたは違うよ。女にでもババァにも誰にでも話しかけられんだからさ。そういう奴は寂しくならないんだろうさ」 娘「そうよ


episode56 『王と悟り』
episode56 7つ目の村を越えると山は下りに差し掛かる。 「ふう」という安堵の溜息とともに、少し寂しくもある。山脈という風景は、カレンの日常からは圧倒的に遠くて、密裡道の佇まいはどこか神秘的で、不思議な異空間に入り込んでしまったような陶酔があった。遠い昔にタイムスリップしたような感覚もあった。長い夢から、今覚めようとしている。 よいのだ。普通の旅路もそれなりに恍惚な夢の中だから。 人の往来が増え、馬車の往来も増え、そしてサザムが言っていたように盗賊っぽい姿の者が多くなってきた。 山の向こうにあったのは、城壁に囲まれた国だった。リンガイアという国だ。 なるほど盗賊風情の者が多い。というか、行き交う人の大半が腰に短剣を差している!こんなに民の武器の所持率が高い国は見たことがないぞ。 リンガイア 挿絵 by 生成AI そしてそれとは別に、町民の2割くらいは盗賊っぽいなりをしている。これは割合としては異常に多いと言える。 しかし幸か不幸か、その中においてソロは溶け込んでいるようだった。弱そうな平民だから絡んでやろう、といった目は向いてこない。...


episode55 『王と悟り』
episode55 4つ目の大きな村を抜け、さらに峰を歩く。 ポタロ宮とシャンバラの寄り道を挟んだことで、この巡礼路は途端に容易に感じられるようになった。ソロはさらに逞しくなったようだった。 戦闘能力が上がったし、険しい山地に強くなったし、なんというか、人間の殺気や狂気のようなものに対してタフになった。 寒さに強くなり、悪路に強くなり、「どんな場所でもどうにか生き延びるだろう」といった楽観を得た。それは言葉に出来ない強さであり、数字に出来ない強さだ。 なぜあの密裡道の者たちがこんな過酷な巡礼路の文化を作ったのか、なんとなくわかった気がした。 魔物と戦わずとも、人は強くなれる。 宗教とは本来、人を高めるためにある。いや宗教には色々あって、人のすがる気持ちを濫用してお金を稼ごうとするようなものが多い。しかし人を高めるために諭すものもある。そういう宗教は、こうした過酷な修行を課すのだろう。 「山を歩け」と言っているのではない。「聖地を目指せ」と言っているのではない。「魔物を倒せ」と言っているのではない。「生きる強さを培え」と真意(い)っている。...


episode54 『王と悟り』
episode54 サザム ソロはサザムの家へと帰宅した。 龍の血の話も、洞穴の龍の話もしなかった。ただ「向こう側に冒険に出た」とだけ報告した。 しかし夕飯を囲みながら、違うことを尋ねる。 ソ「何百歳も生きる人っているんですかね?子供の頃におとぎ話で、山の上には仙人がいるって読みましたよ。すごい長生きしているんです」 サ「何百歳も生きた人間の話が、世界のあちこちにあるらしい。 だからって実在するとは言えないが、何人も報告されているというのはどういうことだろうな」 ソ「健康に生きたらいいんでしょうかね?」 サ「食事に気を付けるだけでは100歳を超えることは無理だ、という学者の説を読んだことがあるな」 ソ「じゃぁ魔法ですか?」 サ「回復魔法というものが本当にあるのを見ると、長生きもあり得ると思える。 長生きとは要は、細胞の回復が良いのだろう」 ソ「でも、魔法は効かないこともあるんですよ」 サ「そうだ。だから回復魔法を使えれば皆が不老不死、ということでもないのだろう。 僧侶だって普通は80歳で死ぬからな」 一泊の休息を経て、ソロとサザムはポタロ宮
episode53 『王と悟り』
episode53 3人はソロをまたいで扉の奥へと入っていく。 戦「うぉー!ホントにいやがった!!!」 雪山の奥深き洞穴には、緑色の大きな龍がとぐろを巻いていた。 盗「うほー!マンガで見たことあんぞ、こういうやつ!」 緑龍 ジャキン!3人は武器を構えた。 3人の構える武器を、龍は見据える。 龍「話し合いをする余地もなしか。仕方ないな・・・」 龍は大きく息を吸い込んだ! 「うぉー!」3人は武器を振りかぶって立ち向かっていく。 ビュゥゥゥ――――――!!!! 龍は冷たく輝く息を吐きだした! 3人は凍り付き、あっさりともう動けない・・・ 龍は凄まじく強いのだった。 ソ「う・・・あ・・・」 ソロは洞穴の向こうの声だけが聞こえている。 ソ「痺れたときはたしか・・・《まんげつ草》だ」 ソロは覚束ない手で懸命に鞄をまさぐり、《まんげつ草》を取り出し、口に入れた。 次第に痺れは引いてくる。 立ち上がり、扉の向こうへ目をやると、そこにいる大きな緑の龍に驚かされる! ソ「・・・!」 龍はゆらゆらと揺れている。 龍「そなたも私を殺しに来たのか?」 ソ「い、いいえ!」


episode52 『王と悟り』
episode52 里を端まで歩くと、まだ広大な雪山が広がっている。なぜここだけ雪がなく暖かいのか・・・なぜというか、そのために設けられた聖地なのだろうが。 そこからはぐれて探索に出ることは大きな危険を伴う。それなりの強さと覚悟がいる。しかし龍とはおそらく、そういった先にしか居ないのだろう。だから彼女は見つけられていない。 シャンバラの雪山 挿絵 by 生成AI ソロは台地から下に降りる。 すると、古い立札が佇んでいるのを見つけた。寄ってみる。 「この上、シャンバラの台地」 ソ「あの無政府世界、シャンバラっていうんだな」 位置のわからなくなった者が、この立札を見て上に登るのだろうか。帰りはこれが大事な目印になりそうだ。 ソロは道しるべの発見に満足して先へ行こうとしたが、ふと立ち止まる。いや、こんなところに立札は必要か?微妙な違和感を覚える。 もう一度立札を見る。 ソ「うーん」 裏側まで見る。 ソ「あ!」 『古の勇者ローシュの旅日記~シャンバラの奥編~』 詩人というのはいやらしい奴だ。なぜなら、比喩表現を多用するからだ。 ソ「う、うん。まぁ耳が痛い


episode51 『王と悟り』
episode51 サザム 無政府世界とやらの中で、ようやく話の通りそうな男を見つけた。 ソ「ありがとうございます。 僕はソロと言います。世界を旅しています」 サ「私はサザムという。 まぁ話したいことは大体察しているがね」 ソ「村の入口で盗賊に会いまして、宿は500ゴールド(約5万円)だと吹っ掛けられました。 無政府世界って、もっと良いものかと想像していたのですが・・・」 サ「昔は、もっと平和な里だった」 ソ「盗賊が、割り込んできた?」 サ「そうだ。君は頭がいいな。話が楽だ。 昔、ここはポタロ宮の精神主義者が隠れ住む地だった。密裡道を信仰する者ではなく、さらにその中でも達観した者だけがここを嗅ぎつけて訪れた。宗教を超えたい者たちが。 それは理想郷、ユートピア、シャングリラと呼ばれ、しかし世界において伝説でしかなかった。およそ誰もこの場所を突き止められはしない。 その精神主義者たちは、王に支配されず、警察に支配されず、自由に大らかに暮らしていた。無政府世界の良い例だ。堕落もない、支配もない大らかな暮らしを、アセンションと呼ぶ」...


episode50 『王と悟り』
episode50 山の上だ。峰の向こう側に出たようだった。 こちら側のほうが風が強いが、この台地にだけは雪がなく、植物も生えている。 向こうに集落が見える。 峰の向こうの台地 挿絵 by 生成AI ソ「人が住んでるぞ!」 ソロは駆け寄る前に振り返った。こじ開けた穴はどうしよう?埋めようとしたが上手くいかない。集落があるならそこの人に頼むとしよう。 里に近づくと、もう人の笑い声が聞こえる。 そしてガーデンテーブルを囲んで男たちがトランプに興じる姿が見える。近寄ってみる。 ソ「あのう」 男「ほらやっぱり次も盗賊だよ! 賭けはオレの一人勝ちだ!へっへっへ~」 男「ちっくしょぉ~」 柄のあまり良くない男たちだ。 ソ「あのう、僕、盗賊じゃないんですけど」 男「え、違うのか?」 男「なんだ違うじゃねぇかよ!カネ返せほら!」 男「じゃぁなんだよ。戦士にしちゃガリガリだぜ」 ソ「いや、戦士か何かもわかりませんが、とにかく盗賊ではないです。モノ盗んだりしませんから」 男「ほら金返せ!」 迷いこむ人がちらほらいるのだろう。その対応に慣れている感がある。...


episode49 『王と悟り』
episode49 意を決して、ソロは抜け道への侵入を試みる。 真っ暗だ。しかしソロには《レミーラ》の魔法がある。周囲は明るくなった。 これは明らかに、人の手によって掘られた洞窟だ。やはり脱出のための抜け道だろうか?それとはまた別のものかもしれないが、恐らくそうだろう。そしてこの宮殿の民は、この洞窟を掘りながら体を鍛えていた、のかもしれない。 なんと道はいきなり左右に分かれている。正面は壁だ。しかしそこには横笛を吹く女神のような像が置かれていて、人が壁に衝突することは防がれている。 ソロは適当に右の道に進んでみることにした。 ソ「えぇと、まずは入口をきちんと塞いでから」 右の道を真っすぐ行くと、やがてT字路となる。左に曲がるか、真っすぐ進むか。どっちだ? つまりこの抜け道は迷路だ!下手に迷うとここで飢え死にする!! ソロはそれ以上先に進むのをやめた。 引き返してくる。 さっき元に戻した黒板の背面が、洞窟の壁とは違う色をしていることを確認する。この色が帰りの目じるしだ。 うーん。どちらに進めばいい? ソロは考える。 フルートを持った女神の像は、「い
episode48 『王と悟り』
episode48 その日は本当にゆっくり過ごした。 洗濯物がたなびく下で、小川のちょろちょろという音を聞きながら、向かい側の壮麗な山脈を眺めていた。 翌日。ソロは動いてみようと思った。 玄関の大きな階段を上り、2階に行く。2階にも多くの部屋があるが、さらに3階に上る。 そこにはやはり王の間のような空間があった。 ここも荒らされているが、魔物にメチャクチャにされているふうとも違う。盗賊は金目のものを盗りたいのであって、建物を壊したいわけではないのだろう。 王のデスクと思しきものがある。そのデスクの上には、大きな立派な本が数冊、乱雑に置かれていた。 ソ「本か。この宮殿にも本がある」 王が読んでいたであろう本に目を通すと、外国の文化・歴史を記すものや、高山植物の事典のようなものや、医学書のようなものだった。王は住民の生活のために自らも本で勉強をしていたと見える。 さらに徘徊すると、図書室があった。 壁に建てつけられた本棚にはたくさんの本が並ぶ。本もその一部は誰かに持っていかれたように見える。 何か面白い本があるんではなかろうか? ソロは幾つかを手にと
episode47 『王と悟り』
episode47 翌朝、とても静かだが、隙間からの日差しで目を覚ます。 とても静かだ。風が戸や壁を打ちガタガタといい、野鳥がピーチクいっているが、それ以外の音がない。それ以外の音がないと、戸の音と鳥のさえずりが聞こえていても、「とても静かだ」と感じる。その感覚は、面白い。 戸から外に出て、今自分が眠っていた建物を仰ぎ見る。 とても大きな建物だ!そこからは全容は把握できない。宮殿と言われるだけのことはある。 向こうの宿からはとても白い建物に見えたが、間近で見れば汚れてくすんでいる。もう手入れはされていないのだから当たり前か。 ソロが寝床にしたのは、用務員室のようなものであったようだ。 広い階段を上って、正門から入るのがスマートだろうと考えるが・・・噂通り侵入者があるのか、正門は豪快に打ち破られている。 ソ「お邪魔しまぁす」ソロはおそるおそる、中へと入ってみる。 中も白い壁がそびえ立つ大きな立派な宮殿だが、何者かに荒されて汚らしく朽ちている。 壁には大きな絵や、金属製の像や、派手な装飾を持つ剣など飾られている。たしかにお宝になりそうだが、ソロは別に


episode46 『王と悟り』
episode46 4つ目の村はなかなか大きなものだった。 大勢の人がいて、学校があったり村の中心に井戸があったりした。 学校に訪問してみると、憩いの場には本棚があった。「村にいる間は借りていってもいいよ」とそこの管理人は言った。学校は子供のものではなく村人のものだ。学校の本棚は村人みんなのものなのだ。 ソロは本を1つ手にとった。 『密裡道の誇り』 「我らの民族は、この密裡道を継承していくために生きている」 ふうん。密裡道とは山脈を巡礼修行する宗派のことだろうか。 そしてまた気になる背表紙がある。 『古の勇者ローシュの旅日記~セントベレス編~』 鎧なんて重すぎるなぁ。盾持ってるし、大体右半身で構えてるんだからさ、肩や右半身だけカバーしておけばよくね?ちょっと工作しよっと。 あれ!DIYっておもしれぇな! それにしても、辺境の地のわりに本の数が多い気がする。尋ねてみると、商人や巡礼者が置いていったものを収めているのだという。商人が学校見学するのか?違う。宿や食堂に置いていかれたものを、村の人たちはこの図書室に持ってくる。 物が少ない地域において、人


episode45 『王と悟り』
episode45 歩いたり馬車を拾ったり、交互に器用に立ち回った。今は西にどんどん距離を稼ぎたい。 やがてまた大きな山が立ちはだかったが、それは馬車道が通る山だった。 セントベレス山脈 挿絵 by 生成AI 標高が上がるにつれて魔物の生息域も変わり、しばらく平穏だったのが嘘のように、魔物は強く険しくなっていった。 キメラはハゲタカとヘビが合成されたような獣である。 キメラ どこかの科学者が遺伝子操作でもしたのだろうか。空を飛び、炎を吐きだしたかと思えば、《ホイミ》で自分や仲間の傷を回復したりもする。 イエティは真っ白い毛むくじゃらのクマのような生き物だ。 イエティ 二本足で歩き、剛腕で殴りかかり、こちらは口から吹雪を吐き出してくる。寒さにめっぽう強いらしい。 武器では苦戦するからと、必殺の《ベギラマ》を放っても、それでも魔物たちは倒せない。《ベギラマ》よりも強いレベルの魔物たちが巣食っている。つまりノーラやそのレベルの魔法使いは、この辺りに寄りつけないことになるのだろう。 山はとても大きかった。セントベレスは山脈と呼ばれていた。ずっと山が続くの
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